※WGP終了からおよそ二か月後inアメリカ
※カルロ出てきません
※「いま、ここでさようなら」とリンク、カルロサイドの「正解だらけの間違い探し」とセットになっています。
※タイトルは「21」さまより
答えは僕を待っている
ホワイトとベージュ色を基調に、ボルドーの赤を指し色にしたアスティア家のリビング。飾りではない暖炉には火がともっていて、2月の雪降るワシントンD.C.でその役目を果たしていた。
炎の正面には、ガラス製のローテーブルをまたいでクリーム色の大きなカウチが置かれ、斜向かいには同じくクリーム色のひとりがけソファが二脚寄りそうようにならんでいる。こちらはアスティア家の家長とその妻専用だ。故にブレットは、L型のカウチの上でひとりあぐらをかいていた。
父は職場、母は台所仕事、姉たちはこの雪にも負けず仲良くショッピングだ。カウチの足元では、二匹のオーストラリアン・シェパードがお利口に伏せをしていた。
リビングを独占状態のブレットは、ローテーブルにバックブレーダーとその整備道具を広げ、カウチの左右にN△S△の資料の入ったラップトップ(表側にスペースシャトルと木星、ザ・ブルーマーブル(地球)のシールを貼り付けているあたりに12歳の少年の気配がある)と宇宙航学の論文(に埋もれるようにネットで拾った新作クロスワードパズルのいくつか)を積み上げている。ついさきほど母がのティータイムの給仕をしてくれたおかげで、ブレットの背後を除く三方位は彼の愛するもので包囲された。
バックブレーダーのメンテナンスに一区切りつけて、ブレットは母の愛情に手を伸ばす。薄く広げたクッキー生地にアプリコットジャムをたっぷり塗り、さらに砕いたアーモンドとバター、砂糖を混ぜ合わせたソースをかけるとオーブンで十五分少々。仕上げに溶かしたチョコレートをかけた甘い甘いクッキーは、母の味というより、大学時代を過ごしたサマービルでホームシックを慰めてくれた祖母の味だ。ブレット同様、気難しい祖父も愛した味に「そんなところもそっくりね」と、ブレットと祖父の「約80歳離れた一卵性双生児」ぶりを姉たちはからかった。
脳に直撃する甘さをほおばりながら、ブレットはラップトップのディスプレイに目を向ける。N△S△専用の青いフォルダをクリックすれば、三つのファイルが顔を出した。左から順に、ヒューストンでの訓練スケジュールとそのスコア、現在ブレットが関わっている研究課題の報告、そして来月にアメリカでの開催を控えた第二回ミニ四駆世界グランプリのデータが入っていた。
中央のファイルを開いてざっと目を走らせつつ、ブレットは二枚目のクッキーを噛み砕くわけでもなく口に咥える。母に見られれば叱られる行儀の悪さで、今度は反対側に腕を伸ばして論文(とパズル)の束を引き寄せた。
コンピュータのマルチタスクのごとく、複数の思考を同時進行させるのが天才少年と謳われるブレットのちょっとした特技だ。この特技のおかげで、ブレットは常に集中力を新鮮に保つことができた。宇宙のこと、バックブレーダーの整備状態、数学や物理の方程式に脳細胞を活性化させながら、ブレットは迫るアメリカ大会を尻目に来し方を振り返る。舌だけで器用に引き込んだクッキーに、歯を立てればサマービルの懐かしさが口いっぱいに広がった。祖母の味、ホームシックに星空を見上げた味、そしてN△S△に入りさえすれば宇宙に行けるのだと無邪気に信じていたころの味だ。
N△S△に言われるがまま始めたミニ四駆。チームリーダー指名の通達を受けた当初は上層部の判断力を疑いもしたけれど、いざ飛び込んでみれば手のひらに余る程度のオモチャを通じてブレットはたくさんのことを経験し、学び取った。およそ12歳とは思えないブレットの、完成された人格を知る家族が目を見張るほどに。たとえカリキュラムの一環で公式戦外での管理まで訓練生にゆだねられているとしても、子どもらしいグッズを大事そうに扱うブレットの姿を、両親も姉たちも興味深く見守っていた。
それだけ多くの影響を与えた一年からまだ二か月、折に触れてブレットが極東の国での生活を思い返すのも無理はない。だがその度に、ブレットはある種のもどかしさに囚われるのだ。
何かが、足りない。
なんでも覚えすぎるきらいのある、ブレットの記憶力でも補えない何かがある。焦燥感に耐え切れず、ブレットはメンテナンスを口実にバックブレーダーを持ち出したのだ。そして今、ブレットの知的探求心において決して上位を占めることのなかったマシンに、不思議と意識が吸い寄せられていく。気が付けばラップトップの表示は星座の舞うスクリーンセーバーに変わっていて、論文も中途半端なページで投げ出されてしまっていた。
WGP選手のほとんどは(ブレットたちアストロレンジャーズとは違い)根っからのミニ四駆愛好家たちばかりで、マシンをそれはそれは大切にしている。その筆頭は間違いなく、日本のビクトリーズだろう。また、マシンメンテナンスに心血を注いでいるという点ではイタリアのロッソストラーダも引けを取らない。今ではダーティの代名詞ともなっている、チームリーダーのカルロなどレース前に愛機・ディオスパーダにキスを落すほどだ。
『頼むぜ、ディオスパーダ』
偶然目の当たりにしたこの瞬間は、ブレットの記憶に即座に刻まれた。マシンにキスするなんて、ブレットにはまるでない発想だったからだ。
そもそも、バックブレーダーは俺のモノじゃない。
こうしてマシンを占有こそすれ、バックブレーダーの所有権それ自体はマシンを開発しチームに提供したN△S△に属する。人工衛星と通信できるマシンだ、どこかにナノレベルに小型化されたカメラがしこまれていて、教官たちが訓練生の動向をモニターしている、と冗談を飛ばしたのはエッジだが、そんな三文フィクションを信じるのと同じくらい、マシンに唇を当て、勝利を祈願する気持ちがブレットにはわからなかった。
わからないことはひとつだけではない。とても信心深そうには見えないカルロがキスを捧げ、勝利の栄光を求めた対象も、ブレットの想像の範疇を超えていた。
勝利の女神? 神様どころか、銀の裏地も信じようとしないお前が?
カルロのセンチメンタルな側面に、ブレットはデジャヴを覚える。雨を嫌い、星空を楽しむ時間は共有しても、雨を嫌う理由や星の楽しみ方はまるで違うのだ。そんな齟齬が積み重なった結果、喰らったのがあの乱暴なキスだとブレットは認識している。ファイナルが終わった直後、苛立ちをぶつけるような(事実ぶつけられたのだろう)あのキスも、やはりカルロのセンチメンタルなのだ。ブレットは、自分の親指が唇を撫でていることに気づけなかった。
遠すぎる雲の形は、手で捉えたくても届かない。ではアプローチの方法を変えてみればいい。例えば、カルロと同じことをすれば届くだろうか。記憶の保管庫に見つからない、足りない何かを取り戻す足掛かりになるだろうか、とブレットはバックブレーダーを取り上げる。
両手の内におさまる、黒い機体を顔の前に掲げてみた。近未来なボディを持ったそのマシンは、牡鹿の刀身(バックブレーダー)の名にふさわしく、リビングの室内灯に力強いラインを煌めかせる。後輪のアクティブサスペンション付近の、側面に描かれた黄色い"BUCKBLADER"のスペルに狙いを定めた。
あと一センチ、というところで、水を差したのはキッチンから立ち入ってきた母の声だ。
「とても綺麗に磨いてあるように見えるけど、傷でもあるのかしら?」
母の邪気のかけらもない問いかけにブレットは我に返る。
「こいつは精密だから……」
気を遣うんだとごまかしを口にする頃には、バックブレーダーとキスしようなんて気持ちはブレットから消え失せる。やりどころのない気恥ずかしさだけが胸に残った。
カウチの一角が沈み込み、書類をまたいだ隣に母が腰を下ろすのがわかった。顔を上げたオーストラリアン・シェパード二匹を平等に撫でながら、母はキッチンの子機で受けたという電話について口にする。
「エッジくんからよ、かけ直しますって」
「呼んでくれればいいのに」
「呼んだわ。三回もよ。あなたが返事をしないのに、エッジくん、よくあることって笑ってたわよ」
ブレットが本気の集中力を発揮したとき、外部感覚一切を遮断しかねないことをだエッジは知っている。伊達に二年も同じチームにいるわけではなく、母の呼びかけに反応しないブレットが大事な考え事の最中なのだろうとエッジは気をきかせたのだ。
電話越しでも察しの良いNo.2の顔を頭に描きながら、東海岸のワシントンD.C.と西海岸のロサンゼルスの時差を考える。こちらがティータイムなら向こうは昼飯前といった頃合だ。一時間もすればこちらからかけ直すべきだろうな、と時計を見上げるブレットを、また思考の海にダイブしようとしていると誤解して母はなおもたしなめてくる。
「あまり熱中しすぎると、帰ってきたお姉ちゃんたちに気づかなくても知りませんからね」
ピクリとも動かない姿をからかわれるならまだしも、無抵抗なブレットに左右からいたずらをしかける姉二人の姿を想像して、ブレットは顔をしかめる。歳の割に多忙な弟が珍しく生家でのんびりと過ごしている現状に、弟をかまいたくてしょうがない姉たちはそのきっかけを手ぐすね引いて待っているのだ。
「俺が何かしてもしなくても、あの二人は絡んでくるさ」
歳にそぐわない忍耐力と冷静さは、生まれてこのかた姉たちの好き勝手にされてきた悲しい宿命の賜物だ。姉たちに、同年代の男にキスされたこと、それが(物心つく前や家族とのあれそれを除外するなら)ファーストキスだったことが知れればどんな目に遭うか。墓の下まで持っていく秘密リストにカルロとのキスを加えて、ブレットはまた自覚がないまま親指で唇を撫でた。
猥りがわしい、とは大げさにすぎるけれど、品行方正からわずかに外れた秘密を抱えた息子を前にして、微笑む母はここのところ上機嫌だ。姉たち同様、活動的な末っ子長男が自分の目の届く範囲にいることを喜んでいるだけでなく、先日のバレンタインデーに父から豪華なバラの花束を贈られたことも母の機嫌に良い影響を与えている。母の腕に余るほどの大きな花束は小分けにされ、リビングやキッチン、ダイニングを彩っていた。きっと両親の寝室にも飾られているだろう、とブレット暖炉の上のボーンチャイナの花瓶に目をやった。
バレンタインに薔薇とは、ルーツをイギリスに持つ父らしいオーソドックスなプレゼントだ。母もまたイギリス系だが、天文学者の祖父にはドイツ系がまじっているのだとブレットはサマービル時代に祖母から聞き及んでいる。シュミットとどこか波長が合う(とブレットは勝手に思っている)のもこのせいか。まさかな、と笑い飛ばせるほどの血の薄さではあったけれど。
カルロとはどうだろう。確かミラノの出身だったはずだ。家具にイタリア製のものがあるとは聞いたことがないし、家族旅行でもミラノは縁がない。
「ママ」
ふと思いついて、ブレットはバラから母に視線を変えて、素直な子どもの声で尋ねる。
「ディナーのメニューは決まってる?」
「いいえ、ちょうどあなたに聞きたくて」
「なら、イタリアンがいいんだ」
アスティア家でイタリアに繋がるものといえば、母が作る料理くらいしか思いつかない。リクエストを口にすれば、手がかからな過ぎる息子からの他愛のないワガママを母はもろ手を挙げて歓迎した。
「ピザかしら、それともパスタ?」
そこでブレットは逡巡した。アメリカでピザといえばデリバリーのそれで、大きな一枚をその場にいる人間で分け合って手で食べる。だがヨーロッパでは一人前サイズをナイフとフォークで食べるのだと、やんごとなき血筋のシュミットはアメリカの粗野な流儀に秀麗な眉ををひそめていた。蛇足だが、生粋のヤンキーであるブレットも、しかるべき店で提供されたピザならばナイフとフォークで食すこともやぶさかではない。とはいえ、やはりピザと言われれば大勢でわいわいと手づかみするという感覚は根強い。
なるべくなら、イタリアにいる彼を連想しやすいものが良い。
「パスタだな」
小さく首を傾げて笑えば、母も応えるように微笑む。そしてカウチから立ち上がる母を、躾けの行き届いた二匹のシェパードが追いかけた。雪の日は彼らを広い庭に出して散歩の代わりにすることを、賢明な彼らはとっくに理解している。
「お利口さんね、さあ、遊んでらっしゃい」
ほんのり雪化粧をほどこした庭に面した窓を開ける母を目で追いながら、ブレットはあぐらをかいた足の上で頬杖をつく。バックブレーダーを置いた手で掴んだ三枚目のクッキーの甘さは、祖母の家を出てから一年以上たち、次第に母の味へと変わりつつあった。
例えば家族の誰かの誕生日に親族の祝い事、そういったイベントに帰宅できない時は、必ずと言って良いほど母は山ほどのクッキーを焼いてブレットの元に送りつけてきた。お祝い気分のおすそ分けには違いないのだろうけれど、母からの恨み言のようにも思えると愚痴ったとき、「まさに単身赴任のお父さんって感じ」と皮肉ったのはミラーだ。全く笑えない冗談だが、たまの帰省でのこの至れり尽くせりぶりには複雑な気分になる。
おそらくリクエストに応える材料を確認するのだろう、キッチンに戻っていく母を見送ると、ブレットは少しだけ目を閉じて外の気配から自らを遮断する。そして頭の中で展開していた思考タスクをひとつずつ終わらせ、ファイルをあるべき場所に収納してから再び瞼を持ち上げた。
目の前に広がるのはブレットの体にも心にもなじんだリビングで、小さなころはシェパードたちと一緒になって転げ回った庭も変わらずそこにある。
メレンゲのような庭の積雪が二匹の犬の足に蹴散らされていくさまを、ブレットは見るでもなく眺めている。待ちぼうけを食らわされたラップトップは、当の昔にスリープモードに切り替わり、真っ暗な画面にブレットの思案顔を映していた。
今頃、どうしてるんだろうな。
頭のなかに一つ残ったウィンドウには、「カルロ」のタブ。
北イタリアの大都市も、今は雪が降るころだろうか。街中が白く染まったミラノの片隅で、彼もブレットと同じように生家で家族と過ごしているのだろうか。彼のお気に入りのクッキーはどんな味で、作ってくれるのは彼のどんなわがままにも笑ってくれるような人なのだろうか、ブレットの母と同じように。
年に数か月といないワシントンD.C.の生家でも、ブレットにとっては足りないもののない世界のどこよりも安全な場所だ。ここではゴーグルもユニフォームもいらない、バックブレーダーとラップトップがなければアストロレンジャーズというチーム名すら忘れてしまえそうだ。
カルロも、同じだろうか。
アメリカ大会の開会式まであと二週間ほど。N△S△からの資料にはイタリア代表としてロッソストラーダがエントリーされていて、選手名簿にもカルロの名は登録されていた。
戦いの日々まであと少し。それまではまだ、雪の下でまどろんでいられる。安息の地で、自分と同じようにご機嫌に羽を伸ばしているカルロをブレットはイメージしようとした。そしてその手がかりの少なさに、ブレットはひとり静かにほぞを噛む。
答えは僕を待っている
(だが、雪どけにはまだ早い)
+++++++++++
ブレットとカルロの生活環境の違いを書こうとして、その落差に絶望すら感じた。
ドイツのお貴族様ほどではなくとも、ブレットは良い所のお坊ちゃんっぽいしね、にじみ出る諸々にそりゃカルロ拗ねるわ。
これから「ミルキーウェイ・ブルース」に続くわけですが、二人ともちゅーしたこと微塵も気にしてなくて(至近距離で見つめ合ったことはえらい意識してるくせに)、何の計画性もなく話を書くとこうなるんだっていういいお手本ですよ。
ま、二人にとってみればあれは喧嘩で殴り合ったのと似たような認識でしょうが。ちゃんとちゅーさせてあげたいなぁ、こう、ドキドキ胸ときめかせるような恥ずかしいちゅっちゅを、ね。
犬の名前は未定だけれど、例えば「アポロ」と「ジェミニ」で、安直すぎると後にカルロに笑われるのもいいかもしれない。カルロはきっと子供のころのあれやそれのせいで犬嫌いだろう。逆にブレットは犬のいる生活が当たり前なので犬好きでしょう。ああ、ここでも二人の落差が……
一応、兄弟(姉妹?)犬で、おじいちゃんのところにいた先代犬の子どもたちって裏設定です。
そして2月のワシントンの積雪具合を調べるのを完全に失念していた。
降ってるよね……? ね?
【カルブレソングについて】
ずっとカルブレに似合う曲を探していて、まだドンピシャな曲は見つけられていないのですが、候補のひとつをご紹介したいなと。
Eaglesの"Desperado"(ようつべに飛びます)
往年の名曲でホモ妄想大変申し訳ございません。
最近、平○堅がカヴァーしているのを聴きまして、しっとりと胸に沁みる……。
歌詞の和訳を探していてたどり着いたサイトの"Desperado"考察がまんま私の中のカルロ!!
(↑和訳サイト、ぜひ考察ページまでお読みください)
「デスペラード (Desperado) とは、英語で「ならず者」・「無法者」・「命知らず」などを意味する、スペイン語を語源とする語。」by うぃき
だそうで、もちろんDesperado=カルロですね。
(ただ、歌詞に「もう若くなることはない」一節がありまして、この歌詞からイメージされる年齢とのギャップはいかんともしがたいですね)
以下、和訳サイトから歌詞のラスト&和訳引用。
Desperado, why don’t you come to your senses?
Come down from your fences, open the gate
It may be rainin’, but there’s a rainbow above you
You better let somebody love you, before it’s too late
デスペラード
正気に戻ったらどうだい?
柵から下りてきて門をあけなよ
雨が降っているかもしれない
だけど君の頭上には虹が広がっている
誰かに愛してもらうんだ
今ならまだ間に合うのだから...
正直カルブレというか、誰かがカルロに歌いかけているような曲だなと思うんです。私はそれがブレットであればいいと願うわけで。
だってだって"somebody"ってところにブレットのテレを感じると言うか、ついクール気取ってつき離しちゃうところが見えちゃうんですよ、私には。だから私の中ではカルブレソング。
素直にLet me love youって言っちゃえばいいのに!
うん、よし。アメリカでのレーサー・カルロのあだ名は「デスペラード」だな。スペイン語じゃねぇか!ってアメリカ人のざっくり感にカルロはうんざりしているといいよいいよ。
あ、そうだ! 二人の結婚式でブレットがカルロに歌ってやればいいよね! もちろんsomebodyのところをmeに替えてね!!ヒューヒュー!!!!
ほんっっと、世界的名曲にごめんなさい。
私にとって、カルロは実は周囲に染まりやすい不安定な子。だって100話で藤吉の言葉に揺さぶられちゃってるから。
なのでチョコレートナイフシリーズのカルロは、ブレットが近くにいればイイ子に流れるし、イタリアでバトル暮らしが続けば荒んでしまう(この部分を前作「正解だらけの間違い探し」で表現したかった……)、そんな糸の切れたカイトのような存在です。一方で計算も立つからやっかいなわけで。
国が違う、価値感も違う、何より譲れない夢があるブレットはずっとカルロの傍にいてあげることはできないけれど、彼ほど強固な足場に強い意志で立ってる子もいないと思うから、どうにかカルロを日の当たる場所まで引っ張り上げてほしいなと願うわけです。
っていうのをちゃんとSSで書きたい。ここで説明してる場合じゃなかった、がんばります(苦笑)
(Desperadoの歌詞に見るカルロ像に共感してくださる方がいたら、うれしいなぁ……)
2015/05/26 サイト初出。
※カルロ出てきません
※「いま、ここでさようなら」とリンク、カルロサイドの「正解だらけの間違い探し」とセットになっています。
※タイトルは「21」さまより
答えは僕を待っている
ホワイトとベージュ色を基調に、ボルドーの赤を指し色にしたアスティア家のリビング。飾りではない暖炉には火がともっていて、2月の雪降るワシントンD.C.でその役目を果たしていた。
炎の正面には、ガラス製のローテーブルをまたいでクリーム色の大きなカウチが置かれ、斜向かいには同じくクリーム色のひとりがけソファが二脚寄りそうようにならんでいる。こちらはアスティア家の家長とその妻専用だ。故にブレットは、L型のカウチの上でひとりあぐらをかいていた。
父は職場、母は台所仕事、姉たちはこの雪にも負けず仲良くショッピングだ。カウチの足元では、二匹のオーストラリアン・シェパードがお利口に伏せをしていた。
リビングを独占状態のブレットは、ローテーブルにバックブレーダーとその整備道具を広げ、カウチの左右にN△S△の資料の入ったラップトップ(表側にスペースシャトルと木星、ザ・ブルーマーブル(地球)のシールを貼り付けているあたりに12歳の少年の気配がある)と宇宙航学の論文(に埋もれるようにネットで拾った新作クロスワードパズルのいくつか)を積み上げている。ついさきほど母がのティータイムの給仕をしてくれたおかげで、ブレットの背後を除く三方位は彼の愛するもので包囲された。
バックブレーダーのメンテナンスに一区切りつけて、ブレットは母の愛情に手を伸ばす。薄く広げたクッキー生地にアプリコットジャムをたっぷり塗り、さらに砕いたアーモンドとバター、砂糖を混ぜ合わせたソースをかけるとオーブンで十五分少々。仕上げに溶かしたチョコレートをかけた甘い甘いクッキーは、母の味というより、大学時代を過ごしたサマービルでホームシックを慰めてくれた祖母の味だ。ブレット同様、気難しい祖父も愛した味に「そんなところもそっくりね」と、ブレットと祖父の「約80歳離れた一卵性双生児」ぶりを姉たちはからかった。
脳に直撃する甘さをほおばりながら、ブレットはラップトップのディスプレイに目を向ける。N△S△専用の青いフォルダをクリックすれば、三つのファイルが顔を出した。左から順に、ヒューストンでの訓練スケジュールとそのスコア、現在ブレットが関わっている研究課題の報告、そして来月にアメリカでの開催を控えた第二回ミニ四駆世界グランプリのデータが入っていた。
中央のファイルを開いてざっと目を走らせつつ、ブレットは二枚目のクッキーを噛み砕くわけでもなく口に咥える。母に見られれば叱られる行儀の悪さで、今度は反対側に腕を伸ばして論文(とパズル)の束を引き寄せた。
コンピュータのマルチタスクのごとく、複数の思考を同時進行させるのが天才少年と謳われるブレットのちょっとした特技だ。この特技のおかげで、ブレットは常に集中力を新鮮に保つことができた。宇宙のこと、バックブレーダーの整備状態、数学や物理の方程式に脳細胞を活性化させながら、ブレットは迫るアメリカ大会を尻目に来し方を振り返る。舌だけで器用に引き込んだクッキーに、歯を立てればサマービルの懐かしさが口いっぱいに広がった。祖母の味、ホームシックに星空を見上げた味、そしてN△S△に入りさえすれば宇宙に行けるのだと無邪気に信じていたころの味だ。
N△S△に言われるがまま始めたミニ四駆。チームリーダー指名の通達を受けた当初は上層部の判断力を疑いもしたけれど、いざ飛び込んでみれば手のひらに余る程度のオモチャを通じてブレットはたくさんのことを経験し、学び取った。およそ12歳とは思えないブレットの、完成された人格を知る家族が目を見張るほどに。たとえカリキュラムの一環で公式戦外での管理まで訓練生にゆだねられているとしても、子どもらしいグッズを大事そうに扱うブレットの姿を、両親も姉たちも興味深く見守っていた。
それだけ多くの影響を与えた一年からまだ二か月、折に触れてブレットが極東の国での生活を思い返すのも無理はない。だがその度に、ブレットはある種のもどかしさに囚われるのだ。
何かが、足りない。
なんでも覚えすぎるきらいのある、ブレットの記憶力でも補えない何かがある。焦燥感に耐え切れず、ブレットはメンテナンスを口実にバックブレーダーを持ち出したのだ。そして今、ブレットの知的探求心において決して上位を占めることのなかったマシンに、不思議と意識が吸い寄せられていく。気が付けばラップトップの表示は星座の舞うスクリーンセーバーに変わっていて、論文も中途半端なページで投げ出されてしまっていた。
WGP選手のほとんどは(ブレットたちアストロレンジャーズとは違い)根っからのミニ四駆愛好家たちばかりで、マシンをそれはそれは大切にしている。その筆頭は間違いなく、日本のビクトリーズだろう。また、マシンメンテナンスに心血を注いでいるという点ではイタリアのロッソストラーダも引けを取らない。今ではダーティの代名詞ともなっている、チームリーダーのカルロなどレース前に愛機・ディオスパーダにキスを落すほどだ。
『頼むぜ、ディオスパーダ』
偶然目の当たりにしたこの瞬間は、ブレットの記憶に即座に刻まれた。マシンにキスするなんて、ブレットにはまるでない発想だったからだ。
そもそも、バックブレーダーは俺のモノじゃない。
こうしてマシンを占有こそすれ、バックブレーダーの所有権それ自体はマシンを開発しチームに提供したN△S△に属する。人工衛星と通信できるマシンだ、どこかにナノレベルに小型化されたカメラがしこまれていて、教官たちが訓練生の動向をモニターしている、と冗談を飛ばしたのはエッジだが、そんな三文フィクションを信じるのと同じくらい、マシンに唇を当て、勝利を祈願する気持ちがブレットにはわからなかった。
わからないことはひとつだけではない。とても信心深そうには見えないカルロがキスを捧げ、勝利の栄光を求めた対象も、ブレットの想像の範疇を超えていた。
勝利の女神? 神様どころか、銀の裏地も信じようとしないお前が?
カルロのセンチメンタルな側面に、ブレットはデジャヴを覚える。雨を嫌い、星空を楽しむ時間は共有しても、雨を嫌う理由や星の楽しみ方はまるで違うのだ。そんな齟齬が積み重なった結果、喰らったのがあの乱暴なキスだとブレットは認識している。ファイナルが終わった直後、苛立ちをぶつけるような(事実ぶつけられたのだろう)あのキスも、やはりカルロのセンチメンタルなのだ。ブレットは、自分の親指が唇を撫でていることに気づけなかった。
遠すぎる雲の形は、手で捉えたくても届かない。ではアプローチの方法を変えてみればいい。例えば、カルロと同じことをすれば届くだろうか。記憶の保管庫に見つからない、足りない何かを取り戻す足掛かりになるだろうか、とブレットはバックブレーダーを取り上げる。
両手の内におさまる、黒い機体を顔の前に掲げてみた。近未来なボディを持ったそのマシンは、牡鹿の刀身(バックブレーダー)の名にふさわしく、リビングの室内灯に力強いラインを煌めかせる。後輪のアクティブサスペンション付近の、側面に描かれた黄色い"BUCKBLADER"のスペルに狙いを定めた。
あと一センチ、というところで、水を差したのはキッチンから立ち入ってきた母の声だ。
「とても綺麗に磨いてあるように見えるけど、傷でもあるのかしら?」
母の邪気のかけらもない問いかけにブレットは我に返る。
「こいつは精密だから……」
気を遣うんだとごまかしを口にする頃には、バックブレーダーとキスしようなんて気持ちはブレットから消え失せる。やりどころのない気恥ずかしさだけが胸に残った。
カウチの一角が沈み込み、書類をまたいだ隣に母が腰を下ろすのがわかった。顔を上げたオーストラリアン・シェパード二匹を平等に撫でながら、母はキッチンの子機で受けたという電話について口にする。
「エッジくんからよ、かけ直しますって」
「呼んでくれればいいのに」
「呼んだわ。三回もよ。あなたが返事をしないのに、エッジくん、よくあることって笑ってたわよ」
ブレットが本気の集中力を発揮したとき、外部感覚一切を遮断しかねないことをだエッジは知っている。伊達に二年も同じチームにいるわけではなく、母の呼びかけに反応しないブレットが大事な考え事の最中なのだろうとエッジは気をきかせたのだ。
電話越しでも察しの良いNo.2の顔を頭に描きながら、東海岸のワシントンD.C.と西海岸のロサンゼルスの時差を考える。こちらがティータイムなら向こうは昼飯前といった頃合だ。一時間もすればこちらからかけ直すべきだろうな、と時計を見上げるブレットを、また思考の海にダイブしようとしていると誤解して母はなおもたしなめてくる。
「あまり熱中しすぎると、帰ってきたお姉ちゃんたちに気づかなくても知りませんからね」
ピクリとも動かない姿をからかわれるならまだしも、無抵抗なブレットに左右からいたずらをしかける姉二人の姿を想像して、ブレットは顔をしかめる。歳の割に多忙な弟が珍しく生家でのんびりと過ごしている現状に、弟をかまいたくてしょうがない姉たちはそのきっかけを手ぐすね引いて待っているのだ。
「俺が何かしてもしなくても、あの二人は絡んでくるさ」
歳にそぐわない忍耐力と冷静さは、生まれてこのかた姉たちの好き勝手にされてきた悲しい宿命の賜物だ。姉たちに、同年代の男にキスされたこと、それが(物心つく前や家族とのあれそれを除外するなら)ファーストキスだったことが知れればどんな目に遭うか。墓の下まで持っていく秘密リストにカルロとのキスを加えて、ブレットはまた自覚がないまま親指で唇を撫でた。
猥りがわしい、とは大げさにすぎるけれど、品行方正からわずかに外れた秘密を抱えた息子を前にして、微笑む母はここのところ上機嫌だ。姉たち同様、活動的な末っ子長男が自分の目の届く範囲にいることを喜んでいるだけでなく、先日のバレンタインデーに父から豪華なバラの花束を贈られたことも母の機嫌に良い影響を与えている。母の腕に余るほどの大きな花束は小分けにされ、リビングやキッチン、ダイニングを彩っていた。きっと両親の寝室にも飾られているだろう、とブレット暖炉の上のボーンチャイナの花瓶に目をやった。
バレンタインに薔薇とは、ルーツをイギリスに持つ父らしいオーソドックスなプレゼントだ。母もまたイギリス系だが、天文学者の祖父にはドイツ系がまじっているのだとブレットはサマービル時代に祖母から聞き及んでいる。シュミットとどこか波長が合う(とブレットは勝手に思っている)のもこのせいか。まさかな、と笑い飛ばせるほどの血の薄さではあったけれど。
カルロとはどうだろう。確かミラノの出身だったはずだ。家具にイタリア製のものがあるとは聞いたことがないし、家族旅行でもミラノは縁がない。
「ママ」
ふと思いついて、ブレットはバラから母に視線を変えて、素直な子どもの声で尋ねる。
「ディナーのメニューは決まってる?」
「いいえ、ちょうどあなたに聞きたくて」
「なら、イタリアンがいいんだ」
アスティア家でイタリアに繋がるものといえば、母が作る料理くらいしか思いつかない。リクエストを口にすれば、手がかからな過ぎる息子からの他愛のないワガママを母はもろ手を挙げて歓迎した。
「ピザかしら、それともパスタ?」
そこでブレットは逡巡した。アメリカでピザといえばデリバリーのそれで、大きな一枚をその場にいる人間で分け合って手で食べる。だがヨーロッパでは一人前サイズをナイフとフォークで食べるのだと、やんごとなき血筋のシュミットはアメリカの粗野な流儀に秀麗な眉ををひそめていた。蛇足だが、生粋のヤンキーであるブレットも、しかるべき店で提供されたピザならばナイフとフォークで食すこともやぶさかではない。とはいえ、やはりピザと言われれば大勢でわいわいと手づかみするという感覚は根強い。
なるべくなら、イタリアにいる彼を連想しやすいものが良い。
「パスタだな」
小さく首を傾げて笑えば、母も応えるように微笑む。そしてカウチから立ち上がる母を、躾けの行き届いた二匹のシェパードが追いかけた。雪の日は彼らを広い庭に出して散歩の代わりにすることを、賢明な彼らはとっくに理解している。
「お利口さんね、さあ、遊んでらっしゃい」
ほんのり雪化粧をほどこした庭に面した窓を開ける母を目で追いながら、ブレットはあぐらをかいた足の上で頬杖をつく。バックブレーダーを置いた手で掴んだ三枚目のクッキーの甘さは、祖母の家を出てから一年以上たち、次第に母の味へと変わりつつあった。
例えば家族の誰かの誕生日に親族の祝い事、そういったイベントに帰宅できない時は、必ずと言って良いほど母は山ほどのクッキーを焼いてブレットの元に送りつけてきた。お祝い気分のおすそ分けには違いないのだろうけれど、母からの恨み言のようにも思えると愚痴ったとき、「まさに単身赴任のお父さんって感じ」と皮肉ったのはミラーだ。全く笑えない冗談だが、たまの帰省でのこの至れり尽くせりぶりには複雑な気分になる。
おそらくリクエストに応える材料を確認するのだろう、キッチンに戻っていく母を見送ると、ブレットは少しだけ目を閉じて外の気配から自らを遮断する。そして頭の中で展開していた思考タスクをひとつずつ終わらせ、ファイルをあるべき場所に収納してから再び瞼を持ち上げた。
目の前に広がるのはブレットの体にも心にもなじんだリビングで、小さなころはシェパードたちと一緒になって転げ回った庭も変わらずそこにある。
メレンゲのような庭の積雪が二匹の犬の足に蹴散らされていくさまを、ブレットは見るでもなく眺めている。待ちぼうけを食らわされたラップトップは、当の昔にスリープモードに切り替わり、真っ暗な画面にブレットの思案顔を映していた。
今頃、どうしてるんだろうな。
頭のなかに一つ残ったウィンドウには、「カルロ」のタブ。
北イタリアの大都市も、今は雪が降るころだろうか。街中が白く染まったミラノの片隅で、彼もブレットと同じように生家で家族と過ごしているのだろうか。彼のお気に入りのクッキーはどんな味で、作ってくれるのは彼のどんなわがままにも笑ってくれるような人なのだろうか、ブレットの母と同じように。
年に数か月といないワシントンD.C.の生家でも、ブレットにとっては足りないもののない世界のどこよりも安全な場所だ。ここではゴーグルもユニフォームもいらない、バックブレーダーとラップトップがなければアストロレンジャーズというチーム名すら忘れてしまえそうだ。
カルロも、同じだろうか。
アメリカ大会の開会式まであと二週間ほど。N△S△からの資料にはイタリア代表としてロッソストラーダがエントリーされていて、選手名簿にもカルロの名は登録されていた。
戦いの日々まであと少し。それまではまだ、雪の下でまどろんでいられる。安息の地で、自分と同じようにご機嫌に羽を伸ばしているカルロをブレットはイメージしようとした。そしてその手がかりの少なさに、ブレットはひとり静かにほぞを噛む。
答えは僕を待っている
(だが、雪どけにはまだ早い)
+++++++++++
ブレットとカルロの生活環境の違いを書こうとして、その落差に絶望すら感じた。
ドイツのお貴族様ほどではなくとも、ブレットは良い所のお坊ちゃんっぽいしね、にじみ出る諸々にそりゃカルロ拗ねるわ。
これから「ミルキーウェイ・ブルース」に続くわけですが、二人ともちゅーしたこと微塵も気にしてなくて(至近距離で見つめ合ったことはえらい意識してるくせに)、何の計画性もなく話を書くとこうなるんだっていういいお手本ですよ。
ま、二人にとってみればあれは喧嘩で殴り合ったのと似たような認識でしょうが。ちゃんとちゅーさせてあげたいなぁ、こう、ドキドキ胸ときめかせるような恥ずかしいちゅっちゅを、ね。
犬の名前は未定だけれど、例えば「アポロ」と「ジェミニ」で、安直すぎると後にカルロに笑われるのもいいかもしれない。カルロはきっと子供のころのあれやそれのせいで犬嫌いだろう。逆にブレットは犬のいる生活が当たり前なので犬好きでしょう。ああ、ここでも二人の落差が……
一応、兄弟(姉妹?)犬で、おじいちゃんのところにいた先代犬の子どもたちって裏設定です。
そして2月のワシントンの積雪具合を調べるのを完全に失念していた。
降ってるよね……? ね?
【カルブレソングについて】
ずっとカルブレに似合う曲を探していて、まだドンピシャな曲は見つけられていないのですが、候補のひとつをご紹介したいなと。
Eaglesの"Desperado"(ようつべに飛びます)
往年の名曲でホモ妄想大変申し訳ございません。
最近、平○堅がカヴァーしているのを聴きまして、しっとりと胸に沁みる……。
歌詞の和訳を探していてたどり着いたサイトの"Desperado"考察がまんま私の中のカルロ!!
(↑和訳サイト、ぜひ考察ページまでお読みください)
「デスペラード (Desperado) とは、英語で「ならず者」・「無法者」・「命知らず」などを意味する、スペイン語を語源とする語。」by うぃき
だそうで、もちろんDesperado=カルロですね。
(ただ、歌詞に「もう若くなることはない」一節がありまして、この歌詞からイメージされる年齢とのギャップはいかんともしがたいですね)
以下、和訳サイトから歌詞のラスト&和訳引用。
Desperado, why don’t you come to your senses?
Come down from your fences, open the gate
It may be rainin’, but there’s a rainbow above you
You better let somebody love you, before it’s too late
デスペラード
正気に戻ったらどうだい?
柵から下りてきて門をあけなよ
雨が降っているかもしれない
だけど君の頭上には虹が広がっている
誰かに愛してもらうんだ
今ならまだ間に合うのだから...
正直カルブレというか、誰かがカルロに歌いかけているような曲だなと思うんです。私はそれがブレットであればいいと願うわけで。
だってだって"somebody"ってところにブレットのテレを感じると言うか、ついクール気取ってつき離しちゃうところが見えちゃうんですよ、私には。だから私の中ではカルブレソング。
素直にLet me love youって言っちゃえばいいのに!
うん、よし。アメリカでのレーサー・カルロのあだ名は「デスペラード」だな。スペイン語じゃねぇか!ってアメリカ人のざっくり感にカルロはうんざりしているといいよいいよ。
あ、そうだ! 二人の結婚式でブレットがカルロに歌ってやればいいよね! もちろんsomebodyのところをmeに替えてね!!ヒューヒュー!!!!
ほんっっと、世界的名曲にごめんなさい。
私にとって、カルロは実は周囲に染まりやすい不安定な子。だって100話で藤吉の言葉に揺さぶられちゃってるから。
なのでチョコレートナイフシリーズのカルロは、ブレットが近くにいればイイ子に流れるし、イタリアでバトル暮らしが続けば荒んでしまう(この部分を前作「正解だらけの間違い探し」で表現したかった……)、そんな糸の切れたカイトのような存在です。一方で計算も立つからやっかいなわけで。
国が違う、価値感も違う、何より譲れない夢があるブレットはずっとカルロの傍にいてあげることはできないけれど、彼ほど強固な足場に強い意志で立ってる子もいないと思うから、どうにかカルロを日の当たる場所まで引っ張り上げてほしいなと願うわけです。
っていうのをちゃんとSSで書きたい。ここで説明してる場合じゃなかった、がんばります(苦笑)
(Desperadoの歌詞に見るカルロ像に共感してくださる方がいたら、うれしいなぁ……)
2015/05/26 サイト初出。
2015/05/26(火)
レツゴ:チョコレートナイフ(カルブレ)
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