※WGP2inアメリカ。「リアリストの狂信」すぐ後くらい。ロサンゼルスの夏。
※烈サイド(後日掲載)とセット、かも???
※短め。
※タイトルは「21」さまより。





 真冬の蛍、その飼い方




 イタリアの荒馬カルロ・セレーニが、アメリカの宇宙少年ブレット・アスティアになついた。そんな評判が一部のグランプリレーサーの間で取り沙汰されていることを、耳聡そうな当の本人たちは意外と知らずにいる。
 人を動物に喩えるにあたり、赤い暴れ馬といえばダーティだが、神経質なストレイキャットならどこかお安い響きが残る。第二回大会でフェアプレイに移行したカルロに対する評価はおおむねそのようなもので、バトル一辺倒だった日本での「飢えたオオカミのよう」という畏怖に比べれば、関係者からの眼差しもずいぶん生ぬるくなってしまったものだ。粗野な育ちへのコンプレックスか、プライドは人一倍の当人が、周囲の包み込むような寛容さに表立って反発しないことも、彼に「何かあった」と勘繰らせる一因にもなっている。
 その野良猫が、ブレットの前では借りてきた猫のように大人しくなるものだから、「なついた」と揶揄されるのも仕方がないことだろう。カルロを変える「何か」を握って、笑うブレットは目元を覆うゴーグルで底意を隠した。
 いったいブレットは、カルロにどんな「マタタビ」を撒いたのか。プレティーンが圧倒的多数を占めるWGPレーサーの中で、早々にティーンの仲間入りを果たした彼は、そうでなくとも群を抜いて成熟した人格を持っていたのだ。それは彼の頭脳の優秀さだけでなく、チームリーダーという役目の担い方、対人関係における彼の優位性などから生み出される安心感、信頼にも表れてくる。気難しい少年が相手であろうと、彼なら如才なく立ち回れるだろうという根拠薄弱な納得を誰もが抱く。
 だが事実は、周囲のイメージとはやや異なるところにあった。
 実際のところ、気まぐれそうなカルロに興味を持ち、好奇心が赴くまま何かとちょっかいを出しているのは大人びて見えるブレットの方だ。カルロを追いまわすブレットという構図は、彼らのチームメイトのみぞ察する秘密である。希少な例外としては、ブレットの広い交友関係の中でもとりわけ親しいドイツのNo.2の名が挙げられた。正直言って、彼らも知りたくて知った秘密ではない。結果的に彼らは周囲の誤解を解くこともせず、アストロレンジャーズ、ロッソストラーダといったチームの垣根を越えて、二人の間で何か「間違い」が起きやしないかと気をもむ羽目になった。
 ちなみに彼らが想像する「間違い」とは、少々押しの強いきらいのあるブレットが何を隠そう実は繊細過敏であるらしいカルロの地雷を踏み抜くこと、そしてカルロの短気さがブレットの朴念仁ぶりに耐えかねFIMAに目を付けられるような暴力沙汰を起こしてしまうことを想定していて、大人が連想するような不純にただれたあれやこれではない(ロッソの側にはそちらを懸念した者もいたようだが、割愛しておく)。
 そんな仲間たちの憂いを知ってか知らでか、二人が肩を並べるシーンは、特に初夏を過ぎたころから様々な人物によって目撃されるようになった。その場所は主に図書室の片隅で、それがおおっぴらな噂にならないのは、WGP関係者で図書室を頻繁に利用するような人物に、他人の余暇に口を挟むような真似を好まない、礼儀をわきまえたタイプが多かったからだろう。こうして巡りあわせた幸運によって、タイプのまるで異なる二人の少年が醸す空気は、しばらくの間、余人に乱されることなくひそやかに育まれていった。
「ブレットくんなら、隣の図書館じゃないか」
 ビクトリーズの自称エース・星馬豪の実兄である烈も、カルロとブレットのささやかな蜜月を知る一人である。ブレットの所在を尋ねた弟に、二人の逢引(とは誇張が過ぎるかもしれないが他に当てはまる表現を烈は見つけ出せなかった)の現場について口を滑らせてしまった烈は、すぐさま後悔した。




 『ブレットくんに迷惑だろ』
 図書室への道を足早に抜ける、豪の頭に兄の声がこだまする。「うるせーやい」と心の中で毒づき、豪はブレットを探してますます足を速くした。きっかけは二日前、アメリカ滞在中に通っているスクールの教師から、小言と共に手渡された一枚の紙のせいだ。そこには成績不振のため豪の週末のレースへの出場権を取り消す旨のそっけない文言が。憎たらしいことこの上ないこの書面は、アメリカでの第二回大会から導入されたWGPレーサーの学力維持・向上のプロセスのひとつだった。
 豪が何より愛するレースへの出場取り消し。回避するには、金曜日の追試に合格しなければいけない。
『またでゲスか、豪くん』
 そう言って、扇子で隠した口元で笑うのは藤吉だ。何せアメリカ大会が始まってから、豪は今回で三度目の追試である。
 レースなら負けないが、成績はビリッけつ。
 豪自身の発言にビクトリーズ内でも異論はなく、これまでの追試はJのサポートもあってなんとかクリアしてきた。しかし今回は頼みの綱のJが、開発中の新モーターの調整のために一時帰国している。同い年の藤吉や兄の烈に教わるなんて言語道断(だいたい烈も藤吉も豪を馬鹿にしたり小言を重ねるばかりで、肝心の教え方が下手だ)、口より態度で示すタイプのリョウは勉強では頼りにならない。
 八方塞がりの豪の頭に、ブレットの顔が浮かんだのは二日後にテストを控えた今朝になってのことだ。
「ブレットはアストロレンジャーズのリーダーで、アストロレンジャーズは宇宙飛行士の卵だから、頭は良いのは間違いねえだろ。レースんときも、計算だのデータだのって、ごちゃごちゃ言ってやがったもんな……」
 自分のイメージを確かめるように、豪はひとりごとを重ねる。ちなみにブレットがすでに大卒であることは烈や藤吉経由で聞かされているが、その時豪が抱いた感想は「ブレットの大学は舌噛みそうな名前だな」というくらいなもので、そもそも「12歳ですでに大卒」という事実が具体的にどのくらいすごいことなのか豪はまったくピンとこないまま、その話題はとっくに忘れてしまっていた。
『今年こそ、パーフェクトにケリをつけてやるぜ、ゴウ・セイバ』
 日本で顔を合わせた当初は、ブレットも頭の良さを鼻にかけた言動が多かったし、豪もそれにしょっちゅう反発してきた。けれどレースで勝ち負けを重ねていくうちに、ブレットからは鼻持ちならなさが消え、今大会では開会式の場で豪に対等なライバルとして握手を求めてもいる。そんなブレットだ、豪がレースに出られないと知れば助けてくれるだろうし、烈や藤吉のように豪を邪険にすることもないだろう。弟体質ゆえか、面倒見の良さそうな人間への嗅覚に優れた豪は、ブレットに狙いを定めた自分の判断に確信を深めた。
 スクールの本棟から繋がっている連絡通路を通り抜けて、真夏の図書館の冷えた扉を開ける。首から先だけをつっこんで、中の様子を探るのは豪にとってここが苦手な空間だからだ。空調の音まで聞こえる静けさは、足音ひとつ立てようもなら誰かのカミナリが落ちてくる気がして、とても居心地が悪い。漫画以外の本を読むなんてもってのほか。授業でもなければ、絶対に近寄りたくない場所ベスト3にランクインしている。
 だが今回の訪問には、「追試に合格するためブレットを探す」という立派な名目があった。豪はドアの向こうに全身を入れると、ブレットのくすんだ金髪を探して歩き出す。目的の人物は、思ったより簡単に見つかった。
 林立する本棚の奥に、一か所だけ隔離されるように設置された閲覧席。そこに腰を下ろしたブロンドの少年に、豪は声をかける。
「ブレット」
 だが豪の呼びかけに振り向いたのは、ブレットひとりではなかった。豪から見てブレットの奥、彼の隣の席で、ブレットの日差しに溶け込むような金髪の陰に銀髪を潜ませるように気配を消していたのは他ならぬカルロで、予想外の取り合わせに豪は目を丸くする。意外なのは相手も同じか、ブレットとカルロ、濃さの違う二対のブルーアイズも豪に向かって見開かれていた。
「ゴウ、珍しいな」
 控えめだが深みのある声で、ブレットは豪を歓迎した。対する豪はブレットのセリフをそっくりそのまま彼に返したい。声をかけた時は髪色やら雰囲気やらで何の疑いも持たなかったけれど、ブレットはアストロレンジャーズ特有のあのゴーグルをしていなかった。試合中はもとより、私服姿でもゴーグルはブレットのトレードマークである。彼の素顔を知らないわけではないが、それでもゴーグルをしていないブレットなどかなりレアだ。隣にカルロが大人しくしているなんて、もっとレアな気がする。
「お前ら何してんの?」
 少なくとも豪は、烈と違い、「カルロがブレットになついた」という噂を知らない。前大会での印象もそのまま、とても仲良しとは思えない二人の距離感に首を傾げた。
 豪の質問に、カルロが答えないのはある意味当然なのかもしれない。だが基本的にざっくばらんなブレットですら、小さく肩をすくめるだけにとどめたのは違和感だった。まるで説明の言葉に窮するような、彼自身答えを見つけていないような態度がブレットらしくなくてまたレアだと豪の目には映ったのだ。
 瞼の厚い、つりあがったブレットの目が、波風を立てることなく豪を見下ろしている。薄い瞳の色は、本棚に日差しを遮られた中でも浮かび上がるように光って見えた。
 ブレットは大人だ。子どもだけど、とても大人なのだ。歳が二個違うせいかもしれないが、彼と同い年のリョウと比べても、なんだか生きてる世界や見えてる物が違うように思えてならない。宇宙飛行士という夢が彼をそうするのか、将来の夢だなんてクラスの作文でしか考えたことのない豪にはやはりよくわからない。そんなよくわからないけれど妙に確固とした存在感のあるブレットから、豪はカルロに視線を移す。ブレットと並べると、刺々しい気配を漂わせる彼すら輪郭があやふやに見えてくるから、奇妙なのだ。
 カルロもまた、大人びた雰囲気がある。背の高さや身のこなしだけでなくて、世の中の何にでもつっかかるような物言いも豪のわがままとは一線を画している。アメリカ大会に至ってはその反骨精神も爪を隠すようになって、どこか物思いに沈む風情が、烈と同い年だなんてますます信じられなかった。
 その二人が肩を並べる。すると、その場に独特の空気が漂うのだ。それが立ち入り禁止の看板のように、豪の前にぶら下がっている。
 なんだか勝手に置いてけぼりをくらった気分になって、豪は気に入らない。不満はより歳の近いカルロの方に向けられ、カルロを睨むついでに彼らのテーブルの前を覗きこめば、豪がもらったものと似たり寄ったりの手紙が目に入る。そして、豪は彼らが共にいる謎が解けた。
「ははーん、お前も追試かよ、カルロ」
 自分のことは棚に上げて豪はカルロを挑発した。弱肉強食だとか、がんばるしか能がないとか、人のことを散々バカにしてきたカルロへの意趣返しのつもりだった。
「お前も頭悪いんじゃん」
 実は導火線の短いカルロのこと、すぐに食って掛かるだろうという豪の予想は裏切られる。
 カルロは腕を組んで、鼻を鳴らした。それっきり悪態ひとつつかないカルロが、またレアだ。レアだけれど、ここのところそんな「牙をむかない」カルロをよく目にする。つまりは、それが最近の彼の流行りというか、傾向なのだ。レースに関わらないカルロは、季節外れの虫みたいに大人しい。
「お前『も』って、お前もか、ゴウ?」
 一触即発(にはならなかったが)の気配を察して、間に入ったのはブレットだ。自分の体でカルロを隠すようにして豪の意識を引き寄せてくる。おかげで豪も、当初の目的を思い出した。
「お前、頭いいんだろ」
 だからこうして、カルロに勉強を教えている。
 豪らしいストレートなもの言いに、ブレットの薄い青とも灰色とも言い難い目がぱちくりと瞬き、直後愉快げにすがめられる。ゴーグルに邪魔されることなく、直に飛び込んでくるブレットの感情は新鮮だった。彫りの深い目元と小さな顎に乗った口で、うっすらと笑みを形作ったブレットは首肯する。
「まあ、それなりにな」
「俺にも教えてくれよ、金曜に追試なんだ」
 赤点の答案と試験範囲の問題集を差し出す豪に、ブレットは少し肩を引いて目を見開いた。切れ上がった目尻を強調する睫が、まばたきに合わせて上下に揺れる。そして彼の小さな顎がカルロの方をふり返った。するとカルロが逃げるように顔を明後日の方に向ける。ブレットは無言でしばしカルロの横顔を見つめ、カルロもまた沈黙を貫く。
 一言の会話もない二人のやりとりを、豪はただ見ているしかなかった。
 音のない会話はブレットの苦笑いで打ち切られる。豪に向き直った彼は、受け取った答案や問題集をめくりながらこう言った。
「後でも構わないか? 夕方とか」
「今じゃダメなのかよ」
 そのためにわざわざ、筆記具も揃えてきたのに。カルロの都合はさておいて、ブレットの手元にあるのはクロスワードの雑誌だけで、どうみてもカルロの相手の暇つぶしだ。ならその時間で自分の相手をしてくれればいいのに、と不満を隠さない豪にブレットは少し思案する様子を見せた。それから、彼は豪の答案をつきかえしながらこう言い聞かせてくる。
「二人同時ってなると、さすがに図書室(ここ)じゃうるさがられるだろ。お前ら、夕飯はチームで食べるのか?」
「ああ、たいていそうだぜ」
「食堂? それとも外か?」
「今日はなんも言われてねえから食堂だと思う」
「なら早めに食堂に来い。夕飯前に教えてやるよ」
 食堂なら、豪がわからないと癇癪を起しても迷惑にならない、と豪の不満を先回りしてブレットは小さく笑う。一年前ならムカついてしょうがなかった余裕の笑みも、気安さの裏返しだと知れば豪にとっては年上に甘えるきっかになる。まるで兄に接するように、豪はわかりやすく眉毛をハの字にしてクレームをつけた。
「腹ペコで勉強かよ」
「食後は効率が悪い。五時に食堂だ、わかったな」
「……わかった」
 背に腹は代えられない豪は、素直に引き下がる。もとより図書館と勉強ならどちらも苦手だ。苦手なものがひとつ減り、夕方までの自由が得られるならそれに越したことはない。
 五時に、と改めて約束を交わして、出口へと向かう豪は少し気になってその場をふり返った。食堂で勉強を見てもらうなら、夕飯時に集まってきたチームメイトとブレットが出くわす。その時に備えて「烈が迷惑をかけるなと言っていたけれどそんなことはないよな」と言質を取りたかっただけだった。
 豪が見た先には、やはり肩を並べるブレットとカルロの姿がある。ブレットがカルロの方に身を乗り出して何やらしきりに話しかけていた。ゴーグルのない横顔にはカルロの気を引こうとする熱意がありありと見て取れて、カルロを見つめる薄い瞳は豪の知らない眩しい粒子にきらめいている。だけどそれは欲しいおもちゃを目の前にした子どものそれとは違っていて、彼の淡い瞳の中に潜む甘ったるそうな何かを、豪はバカにできずに押し黙った。
 豪はブレットのことを、「烈をもっと賢くして、もっと理屈っぽくした奴」だと思っていたけれど、今、カルロに意識をやっている彼は烈よりずっと遠いところに立っている気がしてしょうがない。わけのわからなさに、豪は腹の底がそわそわと気持ちが悪くなる。
『ブレットくんなら、隣の図書館じゃないか。最近よく見かけ……』
 チームリーダー同士という縁もあって、烈は何かとブレットと交流がある。その烈が、ブレットの居場所を問いただす弟にそう口走り、あわてて言葉を止めたのだ。烈が「迷惑になるから」としきりに引き留め始めたのはそれからで、その理由が、これなのだろうかと豪はわからないなりに思案に暮れた。
 そして、豪はすぐに考えるのが面倒くさくなってきた。わからないものはどう考えたってわからない。とにかく約束はとりつけたのだ。五時まで何をしようかと、楽しいほうに考えをめぐらしながら豪は足早に図書館を後にする。




 「教えてやればいいだろ」
 可聴領域から豪が十分離れた頃合に、ぽつりとつぶやいたのはカルロだった。結果的に豪を追い払ったブレットの真意を探るような物言いに、ブレットはたまらず口角を上げる。
「並んで勉強したいほど、あいつと仲良しとは知らなかった」
 ブレットを真ん中にはさんだ構図を思い浮かべて、カルロは眉間にしわを寄せる。その隙に横から伸びてきた手が、カルロの取り組んでいた答案を掠め取った。ブレットのペン先が、途中の計算式がまるでないカルロの答えに注文を付けてくる。舌うちで反抗の意を表明しても、返ってくるのは理詰めの小言だけだ。
「答えが合ってても、過程が見えないと減点を食らうぞ」
「ざっくりで良いって言ったじゃねえか」
「そりゃ、俺はお前を知ってるからな。だが採点官はお前のキャラクターに同情しちゃくれないぜ」
 豪の失点まみれの答案を知るブレットは、説得を重ねる。豪はまるでわかっていないが、カルロは問題を理解している。けれどこの答案のままでは点数の上では扱いは同じ、不合格だ。
「マグナム野郎とご同類は嫌だろ?」
「くそっ」
 弱い所を憎いほど的確にえぐる指摘に、カルロは豪の前では隠した悪態を晒す。だが彼が次にとった態度は、勉学に励むことではなくその真逆だった。
 デスクの上にペンを投げると、カルロは無防備なブレットの肩に問答無用で頭を乗せる。藪から棒の重みに、ブレットはゴーグルで隠すことのないブルー・グレイを見開いて抗議した。
「おい、カルロ」
「眠いんだよ、てめえの天体観測に付き合ったせいだ」
 カルロの銀髪が、ブレットの肩の上で居心地のいい場所を探して揺れる。その重みと硬さを、ブレットは不思議と振り落さない。理屈の通らない不条理は、それだけに留まらなかった。
 最後の天体観測が一昨日だったことを、カルロは忘れていない。体調管理が基本の宇宙飛行士が、同じく自分のメンテナンスもないがしろにできないWGPレーサーを、寝不足になるまで自分の趣味に付き合わせるはずがないと、ブレットが反論することもない。事実と現実と言葉の矛盾が、マーブル状に入り組んでいく不可思議をどちらも正そうとはしないのだ。
 それどころか、
「しょうのない奴だ」
 カルロのこめかみが自分の鎖骨の端に落ち着くのを待って、ブレットはデスクに置いた雑誌に手を伸ばす。答えを書き尽くしたページばかりをめくりながら、ブレットは頬をくすぐる銀髪の自由にさせる。そしてようやく見つけた、見開きのページいっぱいの最難問のパズルを前に声を落した。
「1問、解き終わるまでだぞ」
 ブレットの囁きを聞いているのかいないのか、カルロは濃い青の瞳を瞼の下に追いやったまま。
 パズルをゆっくりと解きだす、ブレットのペン先が子守唄を奏でだした。その音が、二人きりの透明な虫かごとなって当事者を包んでいく。
 カルロが隠さない甘えを、ブレットは拒まない。暑く眩しい夏の図書館の日陰の中で、二人の親密さはこうして噂になる一方だった。




 真冬の蛍、その飼い方
 (それは謎めいた、秘密の方法)





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これでもまだデキてない二人と言い張る。
図書室ホモ大好きなんです。本に囲まれた静かな空間でひっそりと育まれるホモが大好物なんです。書くのも読むのも楽しくて楽しくて、ホモカプごとに図書室であれやこれやさせたいくらい好きで好きで好きで……。
初めてのオトモダチ(?)をひとり占めしたいカルロと、独占欲が嬉しいブレットですか。清いホモです。
この後にですね、ひと悶着起こしたいと思います。そろそろ、こう、決定的な何かをね、ぶつけあってほしいなと。うん。

豪くん初書き?かな??
ショタらしいショタである豪くんは、ショタ萌えしない私にはなんだがすごく難しい。
(カルロもブレットも「ショタ枠」なんですよね~、とっても信じられませんわ!!)
2015/06/2 サイト初出。

2015/06/02(火) レツゴ:チョコレートナイフ(カルブレ)
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